神様修行はじめます! 其の四


痛みと引き換えに手に入れた、命の実感。


門川君の両腕はしっかりとあたしを抱き返し、受け入れてくれた。


「僕は、君のことが好きだ」


薄闇の中で、あたし達は強く抱きしめ合う。


彼の、髪の匂いを確かに感じた。


「・・・・・・」


ふと、視線を感じた。


あたしはゆっくりとその視線の主に向かって振り向く。


浄火が、ダランと手足を投げ出すように地べたに座り込んでいた。


彼は門川君に抱きしめられるあたしを、呆けたように見つめている。


その目に、もう激情は無く。


熱情も、ましてや、恨みや憎しみも無く。


ただどこまでも悲しそうに、抱き合うあたし達の姿を受け入れていた。


(浄火・・・ごめんなさい)


『ごめんなさい』


そんな謝罪の言葉が正しいのか、ふさわしいのかなんて、分からない。


それでもあたしは、その言葉以外に彼に応えるすべがない。


無いのよ・・・浄火・・・。


―― ゴゴゴ・・・・・・


その時、不意に足元が振動し始めた。


最初は軽い地震のような揺れが、あっという間に大きな揺れになる。


地を這うような強い地響きに、あたしの意識は現実に引き戻された。


なに!? 今度はいったい何が起こるの!? 


・・・あれ? でもなんかこの振動って、妙に身に覚えが・・・?


と、思った瞬間。


―― ドゴオォォッ!


目の前の地面を破り、ぶっといロープみたいなものが勢い良く突き出した。