痛みと引き換えに手に入れた、命の実感。
門川君の両腕はしっかりとあたしを抱き返し、受け入れてくれた。
「僕は、君のことが好きだ」
薄闇の中で、あたし達は強く抱きしめ合う。
彼の、髪の匂いを確かに感じた。
「・・・・・・」
ふと、視線を感じた。
あたしはゆっくりとその視線の主に向かって振り向く。
浄火が、ダランと手足を投げ出すように地べたに座り込んでいた。
彼は門川君に抱きしめられるあたしを、呆けたように見つめている。
その目に、もう激情は無く。
熱情も、ましてや、恨みや憎しみも無く。
ただどこまでも悲しそうに、抱き合うあたし達の姿を受け入れていた。
(浄火・・・ごめんなさい)
『ごめんなさい』
そんな謝罪の言葉が正しいのか、ふさわしいのかなんて、分からない。
それでもあたしは、その言葉以外に彼に応えるすべがない。
無いのよ・・・浄火・・・。
―― ゴゴゴ・・・・・・
その時、不意に足元が振動し始めた。
最初は軽い地震のような揺れが、あっという間に大きな揺れになる。
地を這うような強い地響きに、あたしの意識は現実に引き戻された。
なに!? 今度はいったい何が起こるの!?
・・・あれ? でもなんかこの振動って、妙に身に覚えが・・・?
と、思った瞬間。
―― ドゴオォォッ!
目の前の地面を破り、ぶっといロープみたいなものが勢い良く突き出した。


