門川君がペタリとその場に座り込む。
彼はあたしの姿を通して、自分の心を見つめている。
そして冷え切ったあたしの頬に手を伸ばし、そっと触れてくれた。
あたしは彼の手の上に自分の手を重ねた。
「天内君、僕を許してくれ。僕は・・・」
請うようにささやく、彼の声。
「僕は、君が、好きなんだよ」
ああ・・・・・・。
あたしは目を閉じ、天を仰ぐ。
心の底に痛みが満ちた。
じっとしていられないほどの疼きに耐えられず、勝手に体が動き出す。
気がつけばあたしは門川君を、凍える両腕で抱きしめていた。
「門川君! 門川君!」
彼の全てを抱き止め、あたしは泣きながら精一杯叫ぶ。
「あたしも門川君が好きなんだよ!」
想い合う心。
恍惚と呼ぶには、あまりに切なく。
恐れと呼ぶには、あまりに愛しい。
とても言葉にできない想いが胸の奥に流れ落ちていくのを、あたしは感じていた。
洞窟内の透明な氷が、解けるように音も無く消滅していく。
完全に消え去っていく。幻影のように跡形も無く。
身を切る寒さもいつしか緩み、あたしの失われた感覚が戻ってくる。
指先は、ドクドクと脈打つように痺れて痛んだ。


