神様修行はじめます! 其の四


門川君は自分の胸を、手の平で拭い取るような仕草をする。


心の中に潜むドロドロとした、暗い負の感情を払い落とそうとするように。


でも・・・こびりついたそれは、落ちる事はもう決してない。


彼は、恋する事を知ってしまったから。


未熟だった彼の心は、それまでずっと子どものように透き通っていたのに。


ごめんなさい。あたしが・・・穢した。


それでも、それでもあたしは


あなたの心を、その苦しみから解放してあげることなんて、できない。


『好きだからこそ』


心の中でその言葉を、彼に向かって免罪符のように繰り返す。


切なさと苦しさに涙がこみ上げ、目尻が凍った。


落ちることも許されない涙がもどかしくて、あたしは白い息を吐く。


できない。あなたを手放すなんて、できない。だから。


だから・・・・・・


「お願い門川君。あたしを、離さないで・・・」


白い息が、震えた。


嫉妬も、苦悩も、悲しみも、喜びも何もかも。


そのどれからも目を逸らさずに、全部あたしは受け入れると誓うから。


お願い。どうかあたしを、好きでいて・・・。