・・・・・・偽りだ。詭弁だ。
僕は単に、彼女を独り占めしたいだけ。
その自分の感情を、最優先したかっただけなんだ。
だから彼が・・・・・・憎い。
ただひとりの、天内の血の一対である彼が。
僕には、自分の我がまま以外、彼女を縛り付けるものは無いのに。
彼は彼女の隣に居るための、正当な理由も意義も持っている。
僕がどれほど望もうと手に入れられない、絶対的な立場を。
・・・・・・妬ましかった。
心が真っ黒に焼け焦げてしまいそうになるほど、本気で彼を妬んで、憎んだ。
僕は門川の当主なのに。
当主として、不遇な境遇の彼を守り、救わねばならないのに。
自分自身が可愛いばかりに、救わなければならないふたりを、僕は見捨てようとしたんだ。
あれほど・・・自分は当主として、誰よりも相応しくあろうと決意したのに。
天内君を一生守り続けると誓ったのに。
僕は当主失格だ。天内君と共にいる資格も無い。
なのに・・・
どうしても、彼への妬みを消し去れない。
どうしても天内君と彼が結ばれる事を、承服できない。
いや、他の誰であろうと渡したくない。
髪の毛一本ですら、彼女が僕以外の誰かのものになるのが我慢できない。
彼らを救うよりも。
彼女の幸せよりも。
何よりもそれが、僕の本音だ。
あぁ・・・僕は、絶望する。
「僕という人間は、こんなにも醜い心の持ち主だったのか・・・」


