神様修行はじめます! 其の四


「あたしだってば! 分かんないの!? 天内里緒だよ!」


―― ピクン


あたしの名前に、門川君の片眉が微妙に反応して動いた。


あたしは、がぜん勢い込んで叫びまくる。


「里緒だよ! ほら見て! あたし、ここにいるよ!」


半分夢でも見ているような虚ろな目が、何かを探すように下を向く。


あたしは残る全精力を掻き集め、ありったけの力を込めて彼の目を見返した。


あたしはここだよ! あたしを見て! 


「・・・・・・・・・・・・」


無言のままの彼の目と、あたしの目が確かに繋がり合った。


死にもの狂いの眼力が功を奏したのか、彫刻のように動かなかった彼の唇が、ピクリと動き出す。


そして彼はあたしの顔をじーっと見つめたまま・・・


ひと言、こう言った。


「なんて、醜いのだろうか・・・」


・・・・・・・・・・・・。


(・・・・・・はい?)


頭の中が一瞬、ホワイトアウトした。


まるで別世界に飛んじゃったみたいに、時間と空間がしばらく停止する。


み、醜・・・?


なに・・・?


な・・・・・・


な、な、な・・・・・・


「なんだとおぉぉぉーーーー!!??」


おま、今のセリフもっぺん言ってみろぉーー!


空間停止から復活したあたしは、今の危機的状況も忘れて完全にブチ切れた。