「あたしだってば! 分かんないの!? 天内里緒だよ!」
―― ピクン
あたしの名前に、門川君の片眉が微妙に反応して動いた。
あたしは、がぜん勢い込んで叫びまくる。
「里緒だよ! ほら見て! あたし、ここにいるよ!」
半分夢でも見ているような虚ろな目が、何かを探すように下を向く。
あたしは残る全精力を掻き集め、ありったけの力を込めて彼の目を見返した。
あたしはここだよ! あたしを見て!
「・・・・・・・・・・・・」
無言のままの彼の目と、あたしの目が確かに繋がり合った。
死にもの狂いの眼力が功を奏したのか、彫刻のように動かなかった彼の唇が、ピクリと動き出す。
そして彼はあたしの顔をじーっと見つめたまま・・・
ひと言、こう言った。
「なんて、醜いのだろうか・・・」
・・・・・・・・・・・・。
(・・・・・・はい?)
頭の中が一瞬、ホワイトアウトした。
まるで別世界に飛んじゃったみたいに、時間と空間がしばらく停止する。
み、醜・・・?
なに・・・?
な・・・・・・
な、な、な・・・・・・
「なんだとおぉぉぉーーーー!!??」
おま、今のセリフもっぺん言ってみろぉーー!
空間停止から復活したあたしは、今の危機的状況も忘れて完全にブチ切れた。


