服にも、手の表面にも真っ白な霜が貼り付いている。
あたしは冷凍食品みたいになりながら、なんとか生きた状態で門川君の元へたどり着いた。
「かど・・・か・・・」
でも息ができない。気管が呼吸の機能を果たしてくれない。
酸素不足で目の前が霞んでいる。
自分の凍死を目前にして、呼吸もできないのに、なぜかあたしは恐怖を感じなかった。
たぶん感情を司る脳の部位が、異常を起こしてるんだ。
意識の糸がプツプツと、頼りなく途切れていく。
あぁ、なんだか、よく分からない。
氷が冷たい事も、すごく寒い事も、苦しい事も・・・
理解、でき、ない。
・・・・・・あれ?
あたし、ここで、何して、るん、だっけ・・・?
ここ・・・・・・
どこ・・・・・・?
そこまで考えて、あたしの思考と動きはついに停止した。
グッタリと力尽き、目を閉じて弛緩する。
固くて真っ白な氷の床は、待ち構えたようにあたしの体と意識を包み込んだ。
すごく、眠い・・・。
頭の中も心の中も真っ白で、なんだかとても静かで穏やか。
澄み切ってる。真っ白だ。
ほら、真っ白だね。
何もかも、一点の染みも曇りも無い、純白の・・・
まっさらな、子どもの心のような・・・・・・
・・・・・・・・・・・・。
『門川君』
その名が、停止したあたしの全身にほんの一条の光を灯した。
(門川君。門川君)
彼の名前と存在だけが、あたしの心を支えていた。
あたしの死にかけていた目が、彼の姿を見たい一念で動き出す。
そして目の前の、立ちすくむ彼を見つけた。


