神様修行はじめます! 其の四


その顔からは、完全に感情が抜け落ちてしまっている。


元から彼は無表情な人だけど、あれはもうレベルが違う。


門川君、我を失ってる! 力のコントロールができていないんだ!


あたしはとにかく声を限りに叫んだ。


「門川君! 門・・・ げほ! げほ!」


氷の粒を吸い込んだような違和感を感じて、咳き込んだ。


口の中がカピカピになってる。きっと口腔の水分が一瞬で凍り付いてしまったんだ。


それほど強烈な冷気なのに、ますます気温は低下していく。


キリキリと皮膚を刃物で切り付けられているような、体の芯まで凍える冷気。


体が勝手に、痙攣みたいにガタガタ震えて止まらない。


ううぅ・・・寒い。寒いよ・・・。


震えながらあたしはチラリと視線を浄火へ走らせた。


氷片の山に埋もれた浄火は、ピクリとも動く気配が無い。


ふと、前にお父さんと海釣りに行った時の事が甦った。


そういえばお父さん、氷と海水をたっぷり入れたクーラーボックスに魚を入れていたっけ。


『氷〆っていって、これが一番なんだ。鮮度抜群だぞぉ。なにしろ一発で即死するからな!』


・・・・・・・・・・・・。


せっぱ詰まって激ヤバイーーー!


このままじゃあたし達、鮮度抜群になるか、氷の串刺しになるかのどっちかだ!


なんとかしなきゃ!


あたしは門川君に向かって、氷の地面をズリズリとほふく前進し始めた。