浄火がビクッと震えて唇を離した。
まるで自分のした事に、いま初めて気が付いたような顔をしている。
「あ、里緒・・・オレ、オレ・・・」
「嫌だ! 嫌だ! 嫌だーーー!」
あたしは泣きながら叫び続けた。
心は、こんなにも深く傷付いているのに。
これほどの失望を訴えているのに。
なのに、あたしの声はまるでガラスを掻く音のように細かった。
その事が、さらにあたしを傷つける。
見たくないのに。
見られたくないのに。
なぜあたしの両目は門川君を見てしまうの?
まるで無実を訴える罪人のように。
「うっ・・・うぅ・・・か、門川く・・・」
しゃくり上げてボロボロ泣き続けるあたしを見つめる、門川君の両目は・・・
完全に焦点を失っていた。
―― ピシッ・・・
虚ろな顔で棒立ちする彼の頬に、白い霜が走った。
―― ピシッ パチ・・
彼の肩に、袴の裾に、次々と霜が音をたてて走る。
足元からは、霧のように薄く煙る冷気がブワリと巻き上がった。
ドライアイスで急速冷却されたように、彼の周囲の地面が白く煙りながら凍り付いていく。
それは見る間に彼を中心に、同心円状に広がって
そして・・・・・・
―― ドォーーー・・・ン・・・!
予期せぬ鳴動と共に、世界が極寒の白に染まった。


