息苦しいほど強く、顔をギュッと厚い胸に押し付けられた。


背中を締め付ける二本の腕が痛い。


髪に狂おしく頬ずりされる感触がして、あたしは混乱した。


「里緒! 絶対に離さない!」


切ない声と熱い息を耳の上に感じて、反射的に体を固くする。


あ、あたし、浄火に触れられたら・・・!


「痴れ者! 天内君を放せ!」

「嫌だ!」


烈しい怒りを含んだ声に、逆上した声が答える。


浄火の胸は発作のように激しく波打っていた。


ドクドクと荒々しい心臓の音が聞こえる。


ほとんど呼吸もできない態勢で抱きしめられ、あたしは軽いパニック状態。


(苦しい! 放して浄火!)


抵抗して身をよじり、どうにかこうにか顔を上げ、プハッと息を継いで叫んだ。


「浄火! やめ・・・」

「里緒ぉ!」


すぐ目の前に浄火の顔があった。


彼の両目に宿った強い狂気の光が、あたしの目を刺し貫いた。


あ・・・・・・。


この目、見たことがある。この目は。


じー様が、永世おばあ様を襲った時と同じ目・・・・・・。



そう思った瞬間。


その目が迫ってきて、あたしは・・・・・・



浄火に、初めてのキスを奪われた。