「おーい、凍雨くん。もう会議は終わったの?」
あたしはヘラヘラ笑いながら彼に手を振った。
実は今日は、あたしの仲間が屋敷に全員集合してる。
今朝になって突然、急に当主会議が開かれることになったんだ。
それで各一族の当主たちが、緊急で呼び集められた。
氷血の一族の当主、凍雨くん。
権田原一族の当主、お岩さん。付き人のセバスチャンさん。
端境一族の当主、マロさん。その新妻の塔子さん。
この全員がそろうのは久しぶりだよねー。
せっかくだから、この後みんなでランチしようよランチ。
天ぷらソバ食べない?
「ここのソバ、十割ソバなんだよ。知ってる? 十割ソバってね、つなぎを使ってないってことなの」
「天内さん!」
「十割ソバの麺を美味しく打つのって、そりゃもう高度な技術が・・・」
「天内さん! 美味しいソバ粉の含有率の講習してる場合じゃないです!」
凍雨くんが、薄茶色の大きな目を見開いて叫んだ。
少年らしさの残る、可愛げのある表情が緊張している。
「すぐに・・・今すぐここから逃げてください!」
・・・・・・・・・・・・。
へ?
あたしはキョトンとして、凍雨くんの顔を見上げた。
ヒザの上に丸まっていた絹糸が、ゆっくりと顔を上げる。
ニコニコしていたしま子の顔から、笑顔が引っ込んだ。