神様修行はじめます! 其の四


初めて出会った時の、里緒のキョトンと開かれた目も。


本気で怒った時の、吊り上がった眉も。


笑った時に見える歯の白さも。


繋いだ手から伝わってくる、柔らかさも、温もりも。


全部ひとつ残らず、オレの心を捕えてどうしても離さない。


里緒はこの世でたったひとりの特別な人。


「里緒が常世島の人間を見下していないと言うなら、その証明をしてくれ」


「証、明・・・?」


「能力を失う事を承知のうえで、オレのそばにいてくれ」


「・・・・・・!」


「能力の無い人間を見下していないんだろ? なら自分が同じになっても平気だろ?」


浄火は真剣な顔で詰め寄ってくる。


あたしはその真剣さに、思わずたじろいだ。


「そ、そんな事いったって・・・」


「じゃあやっぱり、お前はオレ達を見下してるんだな?」


「違うってば」


「違うなら証明しろよ」


浄火の顔が怖い。


目も、声も、まるで獲物を追い詰める狩人みたい。


いつもの明るい、飄々とした浄火じゃない。


「里緒が好きだ。里緒が欲しい。ずっとオレのそばにいてくれ」


薄暗がりの中で、互いの吐息を感じるほどに近づいて。


彼はあたしの心を掻き乱した。