初めて出会った時の、里緒のキョトンと開かれた目も。
本気で怒った時の、吊り上がった眉も。
笑った時に見える歯の白さも。
繋いだ手から伝わってくる、柔らかさも、温もりも。
全部ひとつ残らず、オレの心を捕えてどうしても離さない。
里緒はこの世でたったひとりの特別な人。
「里緒が常世島の人間を見下していないと言うなら、その証明をしてくれ」
「証、明・・・?」
「能力を失う事を承知のうえで、オレのそばにいてくれ」
「・・・・・・!」
「能力の無い人間を見下していないんだろ? なら自分が同じになっても平気だろ?」
浄火は真剣な顔で詰め寄ってくる。
あたしはその真剣さに、思わずたじろいだ。
「そ、そんな事いったって・・・」
「じゃあやっぱり、お前はオレ達を見下してるんだな?」
「違うってば」
「違うなら証明しろよ」
浄火の顔が怖い。
目も、声も、まるで獲物を追い詰める狩人みたい。
いつもの明るい、飄々とした浄火じゃない。
「里緒が好きだ。里緒が欲しい。ずっとオレのそばにいてくれ」
薄暗がりの中で、互いの吐息を感じるほどに近づいて。
彼はあたしの心を掻き乱した。


