あたしはただ、『普通』 でいたいだけなのに。
でも待たざる側からすれば、それは
『お前たちなんて普通じゃない』
そう宣言されたに等しい事なんだ。
あたしが、そう浄火に宣言した事になってしまうんだ・・・・・・。
そのやるせない現実に、目と鼻が痺れる様に痛くなる。
泣きそうになって慌てて口をギュッと閉じた。
でも声は止めても涙は止まらない。
じゅわっと両目が熱くなって、浄火の顔がぼんやり霞んだ。
「ど・・・して?」
眉が下がって、涙が零れて、すごく情けない顔で。
鼻をグスグス啜って、あたしは小さな声で言った。
「ど、して・・・意地悪言うの・・・?」
浄火だって分かってくれてるはずなのに。
悪意なんかじゃない。決して侮辱でもない。
なのに、あたし達ふたりの間に存在してしまう、この成すすべのない差異を。
なのにどうして?
なぜあなたは、ことさらに言い立てるの?
「好きだから」
あたしは、ピクッと震えた。
涙一杯の目で瞬きをした瞬間、浄火の怖いほど真剣な顔がハッキリ見える。
「里緒の事が本気で好きだから。オレ、本気で・・・・・・お前に惚れてる」


