どんどん先に進む浄火に慌てて訴える。
「行っちゃダメだったら! 危険だよ!」
「オレは行く。里緒はここにいたかったら、いればいい」
ピタッと歩みを止めて、固い声で浄火は言った。
「オレについて来るか、ここにいるか。自分の意思で選んでくれ」
それだけ言って、またスタスタと先へ進み始める。
あたしはその背中を見ながら、途方に暮れて立ちつくした。
・・・なによそのセリフ。
そんなのズルイよ。そんなのってアリ?
ここであたしが浄火について行ったら、あたし、浄火を選んだ事になちゃうの?
・・・・・・・・・・・・。
ちょっと!
「恋愛の選択」と、「生還方法の選択」は、全く別次元の問題でしょ!?
そーゆーわけの分かんない理屈のこね方、ほんとヤメて!
そんな風に物事を複雑化する姿勢が、恋愛トラブルとご近所トラブルを誘発するのよ!
そんで示談がこじれて、結局は民事裁判で大モメになる事に・・・
って、それはともかく!
「待って浄火!」
浄火を一人で行かせるわけにはいかない。
命に危険が及ぶかもしれないってのに、いくらなんでも見過ごせない。
あたしは急いで浄火の後を追いかけた。
薄暗いし、人の手の入っていない洞窟は、足場が悪くてひどく歩きにくい。


