浄火はムスッとした声で反論する。
「猫がどうやって助けに来るんだよ。いいから行こうぜ」
「絹糸はただの猫じゃないよ」
「いいから。オレがちゃんと里緒を守ってやるから。黙ってついて来い」
「浄火、いやあの、だから・・・」
「里緒はオレの嫁だからな。だろ?」
うっと、言葉に詰まる。
あたしはそれに返事ができなかった。
あたしの沈黙のせいで、ふたりの間に気まずい空気が漂う。
考えてみたらあたし達・・・・・・ふたりきりだ。
薄暗い視界。向かい合う距離の近さ。
この息苦しい空間に初めて気が付いて、気持ちが落ち着かなくなる。
心臓が気忙しく鳴り始めて、あたしはうつむいた。
「里緒、さあ一緒に行こう」
「・・・・・・・・・・・・」
どうしよう。うつむいていても浄火の視線を感じる。
その強さと熱さに、皮膚が痛くなる。
浄火の言葉は、まるで願いを込めているようだった。
その切なさに気付いて、さらにあたしの心臓が粟立ち、手に汗が滲んだ。


