一瞬。
本当に全ては一瞬の間だった。
(あ、ヤバイ落ちた!)
と思った時にはもう、自分でもどうしようも無かった。
「天内君!? 天・・・・・・」
あたしの名を叫ぶ門川君の声が、急速に遠ざかっていく。
身を包む風の音と共に、呆気なくあたしは奈落に吸い込まれた。
たちまち周囲は真っ暗な闇に。
最高レベルの非常事態に、あたしは恐怖で完全にパニくった。
し・・・真剣にヤバイよこれ!
死ぬ! 死ぬ! あたしの人生終わったーーー!
心臓が、煙を上げそうなほど激しく動悸を打つ。
脳も筋肉も硬直して、『死』への意識だけが、あたしの全てを支配した。
ヘンなもん体中から撒き散らして地の底に横たわる、自分のイメージが頭に浮かぶ。
・・・・・・嫌だ!
その事実がひたすら恐ろしくて、絶対に認めたくなくて。
顔を引き攣らせながら宙を泳ぎ、躍起になって両手で空気をつかんだ。
死ぬのは・・・死ぬのは・・・
(嫌だあぁぁーーーーー!!)
―― フウッ・・・
不意に暗闇を白い光が照らした。
その光は、あたしの全身を包み込むように柔らかく輝いている。
それと同時に落下するスピードがガクンと遅くなった。


