神様修行はじめます! 其の四


・・・知らなかった。てっきり浄火も長になりたがってるとばかり。


だっていつも島の将来の事、すごく真剣に考えていたから。


「別に長にならなくったって、島のために尽くす事はいくらでもできる」


浄火は長さんを振り返って言った。


「長には、なりたい者がなるべきだ。そうだろ? ばーちゃん」


「浄火・・・」


「この気持ちをずっとふたりに伝えたかったけど、言う機会がなかった」


長さんは、胸に迫るような表情で浄火を見つめている。


シワだらけの顔が、今にも泣きそうに歪んでいた。


そして厚く礼を告げるように、深く謝罪するように、浄火に真っ白な頭をペコリと下げる。


浄火の口元が・・・わずかに微笑んだ。


浄火。それに、長さん。


形は違えど、この島の未来を真剣に考えてきたふたり。


あたしの目に、ふたりの間に繋がる糸が見えたような気がした。


「戌亥、さあ、お前も一緒に村へ行こうぜ」


浄火と長さんが、戌亥を見る。


晴れて長の座を手に入れた戌亥は・・・・・・


眉ひとつ動かさず、ネットリとした目でふたりを見ていた。


「長に 『なんか』 なる気はない。・・・ねえ」


「戌亥?」


「長に 『なんか』 ならなくっても。・・・ねえ」


「・・・・・・・・・・・・」