「浄火、お前も気の毒にな。よりによって滅火の一族の力に目覚めるとは」
「戌亥、お前・・・」
「ま、これも日頃の行いってやつじゃねえの? ハハハ」
「ハハハ。・・・じゃないっての! 金太郎のクセに!」
この非常時に笑ってる場合かっつーの!
しかも見せびらかすみたいに、斧をぷーらぷら揺らしちゃったりしてさ!
あんたの浅い考えなんかお見通しだよ!
どうせ長さんを脅して、自分を次の長に指名させる気でしょ!?
へっ、おあいにくさま!
長さんはもう、隠しだてなんかする気は無いんだよ!
だからそんな脅しに屈服する理由は無いんだ!
「この島の未来を担うのは、浄火だよ! あんたじゃないもん!」
「里緒」
浄火が軽く首を振り、あたしの言葉を遮った。
「戌亥、聞いてくれ。オレは・・・」
浄火は静かな声で、でも熱心に戌亥に向かって語りかける。
「オレは島の長になんか、なるつもりはねえんだよ」
「・・・浄火!? なに言ってんの!?」
「たとえ指名されたとしても、辞退するつもりだったんだ」
浄火の声には真実味があった。
だからそれが、この場限りの出まかせじゃない事はすぐに分かった。
「ただ、オレを推してくれている仲間もいたから、なかなか言い出しにくかった」


