「話は聞いたぜ。この洞窟の奥に、まさかそんな秘密があったとはな」
「き、聞いたって、どこで聞いたのよ!?」
「お前らの後をつけていたんだよ。気付かないとはマヌケなやつらだ」
「お菊人形にマヌケ呼ばわりされる筋合いなんか無い!」
強気で叫ぶあたしを、戌亥は斧を手にヘラヘラ笑って見ている。
その様子はどっからどう見てもアブナイ兄ちゃんだ。
ちょっと、笑わないでよ気持ち悪い!
お菊人形が斧なんて担いでたら、マサカリ担いだ金太郎以外の何ものでもないっての!
外国人観光客向けの、みやげ品かお前は!
「おばあ様ぁ、おれ知らなかったよ」
「戌亥・・・」
「普段あんなに偉そうにしてるあんたが、裏でそんな事してたなんてなあ」
戌亥は狡猾そうな顔でニンマリした。
ヒッヒッと卑しい声を出し、肩を揺すって笑っている。
・・・だから、不気味だからやめろっての!
「戌亥よ、聞いておくれ! 全て事情があったのだよ。私は決してお前を・・・!」
「ああ、別にそれはもういいんだよ。おばあ様」
弁解しようとする長さんを、戌亥は軽く片手を振って止めた。
「言い訳聞くのも、面倒くさいしさあ」
そして、さも同情した声で白々しく浄火に話しかける。


