・・・・・・だめだめ! 自分の弱気に飲まれちゃだめなんだ!
酒は飲んでも飲まれるな! だよね!? うんうん!
「浄火君」
重ねて名前を呼ばれて、ようやく浄火は気が付いたように振り向いた。
「村まで案内を頼む。急いでくれ」
「・・・・・・ああ・・・」
「だから、急げと言ってるだろう! 走れ!」
門川君に促されてやっと浄火が走り出す。
皆がその後に続いた。
しま子に抱えられた長さんは、もうすっかり観念しているみたいで。
なんだか今は、普通のどこにでもいる小柄なおばあちゃんにしか見えない。
マロさんもお岩さんも、複雑な表情で黙りこくって走っている。
門川君はいつも通りの無表情だけど。
でも目の奥を見れば、必死にこれからの対策を考えているのが伝わってきた。
たぶん、あたしを救うための方法も・・・。
世界の危機と、それぞれの心配事。
緊張と不安を抱え、あたし達はせわしなく走り続けた。
重苦しい沈黙が気づまりで、あたしは息を切らしながら長さんに話しかける。
「異形の泉は、あの一か所だけなんですか?」
「・・・いや。この一帯のあちこちに点在している」
この島は飲み水の確保も大変らしいし。
昔、水を探していた島民が偶然、ここで泉のひとつを見つけたんだろう。
知らずに飲んで、干からびて死ぬ者が続出した。
封印の言い伝えは、きっとその教訓からなんだ。
・・・できれば 『これ飲むな』 だけじゃなくて、詳しい説明も残して欲しかったよ。
事情を明記した、立て看板とかさ。
なんでこの手の言い伝えって、一番ミソの部分が必ず抜け落ちてるわけ?
そこを伝えなきゃ意味ないじゃん!


