「蛟(みずち)一族の当主と、信子長老とは、本当の意味での同盟は結んでいないわけだな」


門川君の言葉に、あたしは首を傾げた。


「みずち一族ってなに?」


「子作りマシーン一族の名称じゃよ」


「あ、そうなんだ。そんなマトモな名前があったんだ」


長さんが汚らわしそうに答える。


「あんな男と同盟など結ぶものか。信子は密かに、裏で独自の計画を実行している」


「・・・それは由々しき事態だな」


ますます門川君は深刻な顔になった。


子作りマシーンはまず、あたしの能力を奪って、あたしと門川君を引き離す。


権田原にも手を回して、動きを抑え込む。


それを足掛かりに、門川君を失脚させるのが目的なんだろう。


けど、ババの真の目的は違う。


ババは島の人たちに異形を寄生させて、各一族にじゃんじゃん送り込むつもりだ。


なんせ奇跡の能力者。一族たちは当主みずから対応しなきゃならない。


一族たちは、当主レベルから率先して次々と力を失い・・・。


あっという間に滅びてしまう。


ババは、あちら側とこちら側の力関係を、ひっくり返そうとしているんだ。


その気持ちも理解できるけど・・・・・・


それは見過ごせない。


だって数千年もの間、異形と戦って世界を守り続けてきた神の一族たち。


それが全部滅んでしまったら、大変なことになる。