もはや、悲鳴すらも上げられず。
人智を超えた苦しみに襲われた子独楽は、悶絶する。
口からは、白い泡と真っ赤な血が同時にダラダラ流れた。
断末魔。
惨痛、惨苦。
七転八倒。
この世の苦痛の、その全てを一身に受け・・・。
『死ぬぞ? ほうれ、見よ。死ぬぞ?』
父親は薄目で、信子を見下しながら繰り返す。
『よいのか? お前のせいで、娘は苦しみながら死ぬのだぞ?』
信子は狂女のように髪を振り乱し、金切り声を上げ続ける。
父親は信子の狂乱など気にもとめず、手に持ったツボを振り、残量を確かめた。
『ふうむ、あと一回分、といったところかの?』
そしてチラリと、子独楽に視線を向けた。
『ちょうど、それで限界であろうな』
『・・・うああぁ、嫌ぅあぁーーーーー!』
嗚咽と混乱で、まともな言葉にならない。
それでも信子は叫び、全身全霊で訴えた。
『なぜ!? なぜ私たちが、こんな目に遭わなければならないの!?』
砂場に崩れ、泣き狂う。
両のコブシが砕けるほどに、地を何度も殴りつけた。
そしてノドが裂けるほど叫び散らす。
『なぜ!? なぜ!? ・・・なぜ!?』
神の一族の力を持たぬというだけで、なぜ!?
『・・・・・・なぜだと?』
父親は、鼻からフンッと息を漏らして答えた。
『お前たちがゴミだからだ』


