信子の見開かれた両目は、船を見上げている。
その視線の先、船の帆先には・・・・・・
厳重に縛り付けられた、幼い少女の姿が。
その少女の顔は、人のそれでは無かった。
顔中の皮膚を覆い尽くすウロコ。
釣り上がった白目の中の、縦長に鋭い瞳孔。
裂けるほど長く横に広がった口から覗く、細長い舌。
それは明らかに異形の顔。だが・・・・・・
信子には・・・・・・母には、分かった。
弱々しく垂れていたヘビ少女の首が、ゆっくりと持ち上がる。
長い黒髪の間から覗く両目が信子を見た。
縦長の細い瞳孔に、ほんのわずかに喜びの光が灯る。
牙の生えた口が動いて、小さく言葉をつぶやいた。
『 お か あ さ ん・・・・・・』
喜びに満ちていた頬は、驚愕に染まり。
愛しい我が子の名を呼んでいた唇は、衝撃に引きつる。
まるで理解不能な状況の中で、信子は再び叫んだ。
『子独楽ーーーーーーーー!?』


