子独楽にとってこの別離は、母に捨てられる以外の何物でもなかった。
狂ったように泣きわめき、母の体に全力でしがみ付く。
それを力づくで引き剥がして船に乗せた。
『捨てないで! きっとよい子になるって、やくそくします! だから捨てないで!』
船から身を乗り出し、海に落ちんばかりに暴れて号泣する娘。
母は砂場に身を伏し、泣き崩れる他にない。
『おかあさん! おかあさぁぁぁーーーん!』
どこまでもどこまでも、海の彼方に響く声。
自分を慕い、恨み、呼び続ける声。
『・・・・・・こごまあぁぁーーー!!』
信子は手を伸べ、娘の名を叫ぶ。
海の彼方に去り行く我が子を、つかみ取ろうとするように
もうそれは・・・届かない。
二度と娘に会うことはないのだろう。
それでも、それでもあの子が生きて、幸せになってくれるなら。
それを信じて、耐えねばならぬ!
必死に、信じて・・・
「信子は必死に、信じて、いたのに・・・・・・」
長さんは、涙声で言った。
「子独楽は幸せになるどころか・・・・・・」


