水を飲んだ子独楽は、驚異的な回復を見せた。
死ぬより他にないと思われていた傷が、あっという間に完治してしまったのだ。
信子は狂喜し、私も喜びながらも・・・・・・
不安を感じた。
あまりにも異常な効果が、逆に気がかりだったのだ。
(何か良からぬことが起きるのでは?)
・・・・・・いまさら。
そうだ。今さらもう後の祭り。
私は信子に水の存在を厳しく口止めしつつ、子独楽の様子を見守るしかなかった。
しばらくの間は、何事もなかったが・・・。
「奇跡が、起きてしまった」
長さんの頬が、苦しげに歪んでいる。
『奇跡』という輝かしい言葉とはまるで不釣り合いな、悔恨に満ちた声。
「子独楽に、神の一族の能力の兆しが見え始めたのだ」
漂う重圧な空気が、その先を暗示する。
惨憺たる結末の予感に不安を抑えきれず、全員、重く静まり返っていた。
やがて・・・長さんが再び話し出す。
「子独楽の体に、父方の能力の証が現れた。・・・ヘビのウロコが」
「・・・・・・え?」
「背中にウロコが生え、ヘビ特有の文様が浮かび上がったのだ」
・・・・・・ヘビの?


