もはや手の打ちようが無いのは、ひと目で分かった。
信子はもう、死んでいく我が子を目の前にして発狂せんばかり。
『子独楽(こごま)! 子独楽ーーー!』
半狂乱で泣きわめき、そして死にもの狂いで神に祈った。
『神よ! どうか娘をお助け下さい!』
ほとばしる玉のような大きな涙が、ボタボタと零れる。
血まみれの我が子を何かから守るように、必死に覆い被さり、掻き抱いた。
『子独楽を助けてえぇぇーー!』
血を吐く絶叫。
全てを奪われ、踏みにじられ、それでも、ひたむきに生きてきた。
そんな女に最後の最後、たったひとつだけ残ってくれた・・・・・・
小さな、確かな命。
それすらも今、無情に奪われていく残酷な現実。
抗う事も出来ずに、泣き狂うしかできない母の無力。
それは、この島の全ての女の姿。
その女達の悲しみを慰め、力になり、支え続けてくれた信子までも、今・・・。
無情の定めに落ちていく。
私は、私は・・・・・・。


