「それで因業、ババ・・・に、何があったの?」
なんか、因業ババなんて呼び方、言いづらいけど。
でも彼女は変わってしまった。
・・・何かがあったんだ。
「信子は、この島でも産婆として良く働いてくれた。医療の知識で、島民の命を支えてくれた」
「お腹の赤ちゃんは?」
「無事に生まれたよ。可愛らしい女の赤ん坊が」
信子は、生まれた赤子をそれは大事に育てた。
愛情深い女だ。子の父親との確執など、関係なかったのだろう。
幼子とふたり身を寄せ合い、辺鄙な島で慎ましく、それでも幸せそうに暮らしていた。
そして親身になって島の者たちの命を守り、いつも笑顔で支えてくれた。
皆、信子の存在に心から感謝しておった。
私も、全幅の信頼を寄せていたよ。本当に頼りにしていた。
ところが・・・・・・
「信子の娘が七つの頃、大ケガを負ってしまった。命にかかわる重傷だった」
傷口から血が溢れ出してどうしても止まらない。
小さな体はみるみる青ざめ、冷たくなっていく。


