「水、動いてる! ほらそこ移動してる!」
あたしは水を指さしながら金切り声を上げた。
動くどころか、水はニュルニュルと地面の上を移動していた。
まるで意志を持ったスライムみたい。
泉に向かって真っ直ぐに、どんどんスピードアップしながら突っ込んでいく。
あの水、元の泉に戻ろうとしてるの!?
「なんじゃ、あれは!?」
「これ、ちょっとお待ち!」
絹糸と主さんが素早く後を追いかけたけど、一瞬、水の方が速かった。
泉の中に、するんっと音もなく滑り込んで同化してしまう。
あたし達は泉の周りに急いで駆け寄り、ぐるっと取り囲んだ。
泉は何事も無いように、静かに乳白色の水をこんこんと湧き出している。
「この水なんなの!? 生きてるの!?」
「生きておる。が、恐らく水の意思というよりも、ただの回帰本能じゃ」
「回帰本能? これ、やっぱり異形?」
「極端に原始的で単純な、異形じゃな。だから我の鼻でも分からなかった」
青ざめた浄火が険しい表情で、泉の水を眺めている。
「長・・・・・・この水、なんなんだよ?」
長に向かい、恐ろしく思い詰めた声で質問した。
「あんた、知ってんだろ? だから・・・この水を、オレに飲ませたんだな?」
・・・・・・・・・・・・!
飲んだあ!? この水を浄火が飲んだの!?


