またひとつ、不安の種が胸の奥に撒かれた。


お岩さんとセバスチャンさんの事。


塔子さんやあたしの身に起きている異変。


島に起こっている、不穏な奇跡の正体。


あたしたち三人の関係も、これからどうなるんだろう。


門川君が恋愛感情に目覚めてくれる日を、心待ちにしていたのに。


なのにこんな状況じゃ、ちっとも・・・。


「なにやら海が騒いでおるのぅ」


絹糸がオーロラの海を眺めている。


ユラユラと凪いだ海のように揺れていた虹色の輝きが、いつの間にか大きくうねっていた。


「・・・来るね。荒れるよ」


主さんも海を眺めて、そう言った。


音もなく近づいて来る。せわしなく打ち寄せる。


遠い見知らぬ果てから、ヒタヒタと不安と憂いを運んでくる。


取り囲まれている島は、波から逃げる事はできない。


来るのが分かっていながら、待ち受ける事しかできないんだ。


それがどんな結果をもたらすのか、予想もできないまま・・・。


恐れにも似た悩ましさを抱えながら、あたしは村へと進むしかなかった。