「切り返されて逆上してちゃ、世話ないよ。ここはあたしの顔をたてて素直にお引き」
迷惑をかけた主さんにそう言われたら、浄火も引っ込むしかない。
むすうぅ! とした不満顔で「ついて来いよ!」と村へ向かって歩き出した。
・・・ああ、ケンカにならずに済んで良かった。
険悪な空気が解除されて皆が安心した・・・のも、つかの間。
また門川君が、横から余計な追い打ちをかける。
「どうやら理解してもらえたようだな。ならば君の不作法は黙認するとしよう」
「・・・・・・・・・・・・」
「もう気にしないでくれたまえ。許すから」
ビタッ! と浄火の足が止まった。
・・・うわわ! 一触即発!?
浄火はその場でプルプル身を震わせながら、大きく数回、深呼吸。
ラマーズ法みたいな呼吸を繰り返し、必死に怒りを抑え込む。
そして肩を怒らせドガドガ歩き始めた。
固唾を飲んで見守っていたあたし達も、はあっと息を吐く。
良かった・・・。このまま血を見る事態に発展するかと思った・・・。
「永久、ちょっとセーブせんかい。おぬし絶好調過ぎるぞ?」
絹糸が半分感心、半分呆れた声を出す。
同感。浄火は門川君に慣れてないんだから。
門川君が本気でカッ飛ばしたら胃に穴が開いちゃうよ。


