どくんどくんと、心臓が騒がしく鳴り始める。
不安がどんどん高まっていく。
「二度と術が使えなくなっちゃうってこと・・・?」
「それは分からないが、症状を発症した者は結局、誰ひとり能力が回復していない」
「まだ人数が少ないゆえ、ただの体調不良で片付けられておるがのぅ」
「でもそれは深刻な問題ですわ。なぜ大騒ぎにならないんですの?」
怪訝そうに聞くお岩さんに、門川君は首を横に振る。
「あちらは今、別の件で大騒ぎなんだ」
「別の件? どんなですの?」
「常世島の件だよ」
お岩さんと浄火とあたしが、一瞬沈黙した。
あ、それってひょっとして・・・・・・。
「そうだ。突然次々と現れた、常世島の能力者たちだよ」
「有り得ぬ奇跡の大盤振る舞いに、門川上層部は大混乱じゃ」
「お蔭で体調不良の件など、とても気にしていられる状態ではおじゃりませぬ」
「だが、奇跡の陰できっと何かが起きているんだと思う。この島を発端に」
浄火が重々しい顔つきで、みんなの話を聞いている。
やっぱり因業ババは何かを企んでいるんだ。
だってこれが偶然起こった出来事であるはずがないもの。
「そ、それで、被害はどの程度広まっていますの?」
お岩さんが心配そうな顔をした。
権田原の民が気がかりなんだろう。


