神様修行はじめます! 其の四


「戌亥、このメガネ当主は最初から、逃げも隠れもしちゃいねえんだよ」


「こいつを庇うのか!? 浄火、やっぱりお前はよそ者・・・!」


「見りゃ分かるだろ? こいつはただ、救っただけだ。ふたりをな」


浄火は、門川君の背中をじっと見ていた。


「オレら島民が誰もできなかったことを、よそ者がやりやがった。・・・それだけさ」


「・・・・・・・・・・・・」


戌亥も島民たちも、思わず門川君の横顔に見入った。


憂いを帯びた、その美しい横顔。


澄んだ冬の空気のような眼差しで、母子を無心に慈しんでいる姿。


―― スッ・・・


母親が、子どもを抱きかかえながら立ち上がった。


愛しげに子どもの髪に頬ずりしながら、フラフラと歩き出す。


「さあ、帰ろうね・・・おうちへ」


涙で枯れ果てた声でそう言って、村へと向かい始めた。


「・・・・・・・・・・・・」


無言でその背中を見ていた島民たちが、ひとり、ふたりと後を追い始めた。


次から次へ、ゾロゾロと村へ戻り出す。


「おい! みんな! おいって!」


慌てて戌亥が声をかけるけれど、聞く人は誰もいなかった。


母親を囲んで寄り添い守るように、村へと帰っていく。