抱き合うふたりを、みんなが見つめている。
泣いている人もいた。
あたしも言葉にならない想いで胸が詰まってしまって・・・声が出ない。
「さあ、みんな戻ろうぜ」
浄火が声をかけた。
「その子を送ってやらなきゃならないだろ?」
島民の間に漂っていた、険しかった空気も表情もすっかり抜け落ちていた。
あたし達に対するわだかまりは、多分まだ残っているだろうけど。
でもそんな事より何より、彼らだって今はこの子の魂を・・・・・・。
「みんな、戻るな! おいお前ら、このままうまく責任逃れするつもりか?」
また戌亥が横からキンキン声で門川くんをなじり始めた。
・・・・・・さすがにもうウンザリ。
島民たちの顔にも嫌気が見え始めている。
「可哀そうな母親を丸め込みやがって! おれは簡単には騙されないぞ!」
こいつって全部が全部、とにかく浄化に反発したくてたまらないんだろうな。
まるで高反発マットレスみたい。


