神様修行はじめます! 其の四


涙で汚れた母親が、呆けた顔をゆっくり上げる。


その目は作り物のガラスのように、意思の力がまるで感じられなかった。


「もっと僕が早く来るべきだったんだ」


「・・・・・・・・・・・・」


「そうすれば、海の異形も倒せたと思う」


「・・・・・・・・・・・・」


「ごめんよ」


見開かれたままだった子どもの両目を、門川君が手で押さえる。


まぶたが静かに閉じられた。


それだけで・・・・・・安らかな表情になる。


まるで救われたように。


呆けていた母親の顔がフルフル歪んで、目に涙が盛り上がった。


むせぶ声と一緒に、汚れた頬にまた新しい涙が流れ落ちる。


・・・・・・ふと、主さんの言葉を思い出した。


『ただ、その子を悼んでおやりよ。その子のために泣いておやり』


誰のせいだの、責任だの。


こっち側だのあっち側だの、よそ者だのと。


周りの大人は、あなたを前にそんなことばかりを口にして。


・・・・・・・・・・・・。


ごめん、ね。


ごめんね。ごめん。


ごめんね・・・・・・。