神様修行はじめます! 其の四


厳かに断言する彼に対して、戌亥は息を飲み、声を失った。


静まり返った空間に、聞こえるのはマロさんの声だけ。


「永久様の言う通り・・・不条理を『道理』として受け入れるわけには、いかぬでおじゃる」


凄みすら感じられるほど真剣な彼の声を、この場の全員が聞き入っていた。


事実から生まれるマロさんの言葉は、見過ごすことのできない重みと迫力があって。


島民はみんな複雑な表情を浮かべている。


まるで正論を突き付けられた子どもが、心の中で懸命に反発するような。


どこか後ろめたいような、そんな顔をしながら物も言えずに立ち尽くしていた。


そんな、気まずさの漂う空気の中で・・・・・・


門川君がひとり、動いた。


(門川君・・・・・・?)


―― ザリ・・・ ザ・・・


彼の真っ白な履き物が、土を食む音がする。


その小さな音が、張りつめた糸のような空気を少しだけ緩めてくれた。


あたしも皆も、救われたような気持ちで彼の動きを目で追う。


ゆっくりと彼は、魂の抜けたような母親の元へと近づいて行った。


そしてその場にしゃがみ込み、彼女が抱いている子どもの髪を・・・そっと優しく撫でた。