マロさんは島民たちを守ろうとしているんだ。
・・・自分が、過去に犯してしまった罪だからこそ。
二度と同じ過ちを繰り返させないために。
「道理の通らぬ刑罰は、ただの私刑でおじゃる」
「・・・私刑? はっ、結構じゃないか」
戌亥が大袈裟に両腕を振り上げ、唇の片方を上げて笑った。
「私刑だろうがなかろうが、この島で通ればそれでいいんだよ」
「良くないでおじゃる」
「いいんだよ! それが島の道理なんだから!」
「良くないでおじゃる。隔離された小さな世界で、一度不条理が通ってしまえば・・・」
マロさんが、スッと立ち上がる。
そしてこちらを振り向き、強い眼差しで戌亥に断言した。
「いずれ必ず、暴走する。そして間違いなく取り返しのつかぬ悲劇を生むのでおじゃる」
千年前の、雛型の家族を襲った悲劇。
それは狭く鬱屈した、閉じ込められた世界で起きた不条理な暴走だった。
歯止めのきかない暴走の行き着く先など・・・破滅しかありえない。
「いつかまた、誰かに不条理が降りかかる。でも『この島ではそれが道理』。そして次には・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「我が身へと火の粉は降りかかり、次々と皆、自滅してゆくのでおじゃる」


