神様修行はじめます! 其の四


「気持ち良いでおじゃろう? さぞ、気持ちが高ぶっておじゃろう?」


「なんだお前? さっきから何を言っている?」


戌亥が不審そうに言った。


マロさんはやっぱり背を向けたまま、ポツリと答える。


「自分たちだけに通用する理屈を振りかざして、さぞや気持ち良かろうと言っておじゃる」


「なんだとぉ!?」


「嫌味ではおじゃらぬ。麻呂には、手に取るように分かるのでおじゃるよ」


うつむいた後ろ姿が、訥々と語った。


「麻呂も・・・かつて全く同じであったゆえ」


悲哀のこもった声。


それは、悔恨の滲み出るような声だった。


その寥寥とした背中に、戌亥も島民も思わず声を失っている。


「麻呂たちも千年、よそ者を責め続けた。そして自分達だけの道理に閉じこもり続けたあげく・・・」


ポツンと、こぼれる言葉・・・。


「道を、踏み外したでおじゃる」


端境 典雅(はざかい てんが)。


由緒正しい、そして、悲遇の端境一族の当主。


かつて座り女の雛型を利用して、世界を破滅に導きかけた。