門川の当主。王者の象徴。


でも『よそ者』であるこちら側では、向こうの常識は通用しない。


あの圧倒的な門川の威信が・・・ここではまったく無意味に近いんだ。


「子どもひとり死んだ分と同等の責任は、きっちり取ってもらうぜ!」


胸を張って主張する戌亥の顔に、書いてある。


『あちら側の一番偉い人物を、この自分がやり込めている。どうだ? みんな!』


戌亥は自分の力を誇示するために、門川君が自分に従うところを、皆に見せたいだけなんだ。


「そっちにもひとり、死んでもらおうか。こちらの要求はその赤鬼だ!」


「いや、断る。しま子にも誰にも責任など無い」


最高潮な戌亥に向かって、あっけらかんと門川君は言い切った。


「・・・・・・は?」


「不条理な死の要求など、僕は承服しないと言っている」


一瞬絶句して、戌亥はポカンと門川君の顔を眺める。