そう言って、変わり果てた子どもを抱く放心状態の母親を指さす。


門川君と絹糸の目が、そのふたりに注がれた。


・・・・・・言わなきゃ。今こそちゃんと説明しなきゃ。


あたしはコブシを握りしめ、意を決して重い口を開いた。


「門川、くん・・・その子は・・・あたしの、せいなの・・・」


「それは、しま子が子どもを襲ったということか?」


門川君は、即座に状況を察してくれたようだった。


その声はとても落ち着いていて、動揺している様子は全くない。


おかげであたしは、少しだけ冷静な気持ちで説明することができた。


「ううん。襲ったのはもちろんしま子じゃない。海の大ウツボ」


「・・・・・・・・・・・・」


「海で、あたし達に襲い掛かってきたから撃退したの。そのせいで恨まれたんだと思う」


「まだそんなデタラメを言うつもりか! 自分の罪から、そんなに逃げたいか恥知らずめ!」


戌亥の叫び声に、その場の空気がまた悪化した。


みんなの非難の視線が一気にあたしに集中する。


突き刺さる視線を、皮膚に痛いほど感じる。


針のムシロとは、まさにこの事なんだと骨身に染みた。


あたしはますます強くコブシを握りしめ、下を向いて小さな声でつぶやく。


「ウツボが、島に姿を現すことは、今まで一度もなかったの。つまり、あたし達のせいで・・・」


そこまで言って、声は消え入ってしまった。


あたしは唇を噛みしめる。