戌亥だけじゃなく、島民全員に動揺と疑惑が広がる。
「門川って、あの門川か?」
「その当主? まさか。まだ子どもじゃないか」
細身な、目を惹きつけられるほど美貌の少年。
とても大きな組織の長だとは思えないんだろう。
でも・・・・・・
「あれだけの異形を従えているんだ。それがなによりの証拠だろ?」
浄火が氷龍を見ながら言った言葉に、島民は納得するしかない。
「そう・・・だな。確かに」
「こんな化け物が存在するなんて、信じられないわ」
「こいつを操っているのか? すげえ」
「門川一族。話には聞いたことがあるが・・・」
論より証拠。理屈ではなく、現物が目の前にあるのは大きかった。
みんな氷龍と門川君を、遠巻きにして珍しそうにマジマジ眺めている。
どうやら門川君が当主だってことは、皆に信じてもらえたようだけど。
「何がすごいものか。いいかみんな、だまされるなよ?」
どうやら差し迫った危険は無いと判断したんだろう。
戌亥が、急に態度をでかくして浄火の影から前に出てきた。
「しょせん、異形だろう? 忘れるな。島の大事な子どもが、よそ者の連れ込んだ異形によって殺されたことを」