「それこそ誤解だ。氷龍で君達を脅すつもりなど、僕は毛頭ない」
「よくも言いやがる! これだからよそ者は・・・!」
「落ち着けぃ、お菊人形。この龍はただの移動手段じゃ」
「移動手段と、このデカい異形と、なんの関係があるってんだ!?」
大声で息巻く戌亥に対し、門川君も絹糸もまったく表情を変えない。
淡々と説明を続ける。
「だから、霊質と神格の問題だよ」
「龍は神秘の象徴じゃ。古来からの蛇神信仰と同質なのじゃよ」
「門川所有の宝船は、いくら僕でも私用で持ち出す事は不可能だからな」
あの海を渡るのに必要な、貴重な宝船は使えない。
でも門川君には自前の氷龍がいた。
そのお蔭で、あの特殊空間を渡って来られたんだ。
ってことは、神器と同等レベルってことなの?
すごい、さすがは門川君の召喚龍。
「・・・・・・門川?」
あたしが感心している部分とは違う部分に、戌亥が反応した。
「いま門川って言ったのか?」
「戌亥、こいつは門川の当主だ」
浄火の言葉に、戌亥が目を丸くする。
「・・・・・・当主? こいつが? まさか冗談だろ?」
「本当だ。オレが向こうで謁見した相手は、間違いなくこいつだった」


