スッと、門川君があたしに向かって『待て』というように片手を上げた。
そして浄火の方へと真っ直ぐに体を向ける。
門川君と浄火が、距離を置いて向かい合った。
ふたりとも無言のままで、間に漂う空気が剣呑な匂いを放つ。
「・・・どうやら、僕の仲間が問題を引き起こしてしまったようだ」
沈黙を破ったのは、門川君の方だった。
「仲間に代わり、僕の方から謝罪を申し上げよう。浄火君」
いつもと変わらない、冷静沈着で感情の見えない声。
でも少しだけいつもより声のトーンが低いのに、あたしは気が付いた。
「・・・別に、あんたに謝罪してもらう義理は無いさ」
対する浄火も、これまで聞いたことのないような物静かな・・・
いや、感情を押し殺した、低い口調で。
「里緒はオレの嫁なんだからな」
「・・・・・・・・・・・・」
ふたりの間に、また剣呑な沈黙が漂う。
門川君の方から、一段冷えた空気が流れてきたような気がした。


