あたしは氷龍の背を確認した。
もう他には誰も乗っていない。来たのは門川君と、絹糸と、マロさんだけらしい。
お岩さんの目が、何かを探し求める様に氷龍の背の上を彷徨っている。
そしてガッカリしたように視線を下ろした。
・・・きっとセバスチャンさんのこと、探してたんだ。
「これでもう支障おじゃりませぬ。安定したでおじゃるよ」
「ありがとう、典雅殿」
マロさんにお礼を言った門川君が、ゆっくりと立ち上がった。
いったん落ち着いていたあたしの心臓が、騒がしく鳴り始める。
あたし・・・門川君にどう説明すればいいだろう。
ううん、言い逃れようなんて事は、これっぽっちも思っていないけど。
あんまり自分がバカで申し訳なさ過ぎて、言葉も出てこないんだ。
彼を門川に置き去りにして。長老の船を勝手にかっぱらって。考えなしに島へ乗り込んで。
そのあげくに・・・・・・。
あたしは、子どもを抱きかかえる母親をオズオズと盗み見た。
胸が鉛を抱えたように重苦しくなる。
居たたまれなくて、その場に崩れ落ちそうになった。
でも口を閉ざしてはいられない。自分の口から、あたしが起こしてしまった事の顛末を説明しなきゃ。
あたしはゴクンとツバを飲み、口を開いた。
「あ、あの門川君・・・・・・」


