「邪魔立ては相成らぬ。静かにそこに立っておれ」
絹糸が、治癒中の主さんをじっと見つめたままそう言った。
「しゃべる猫だと!? さてはお前も異形か!」
「静かにしろと言うておろうが」
「次から次へと島へ異形を招き入れやがって! それもこれもみんなお前らが・・・!」
「やかましい男じゃのう。この呪いのお菊人形は」
「呪・・・どういう意味だ!」
パッツリ揃った前髪を振り乱し、戌亥が怒鳴る。
今度は絹糸に向かってズカズカと歩き出しかけた時・・・
―― ぬうぅぅ!
氷龍が巨大な頭を持ち上げ、戌亥に顔を向けた。
戌亥は口の中で小さくヒッと息を漏らし、青い顔でバタバタと後ずさる。
「静かにせぬと、そやつが勝手にお前を敵と見なすぞ?」
ちらりと視線をこちらに向け、事も無く絹糸は言った。
「身動きせぬほうが身のためじゃ。長生きしたくば、年寄りの言うことは聞け」
ぐうっと息を飲んだ戌亥は、悔しそうに黙り込む。
そして目だけでギョロリと絹糸と門川君を睨んだ。
その横をスタスタとマロさんが小走りに駆け抜けて来る。
「永久様、結界術で固定いたしまするか?」
「ああ、頼む」


