反射的に身を起こしたあたしは、この目で見た。
真っ赤な炎がメラメラと、しま子の体を覆って燃え盛るのを。
炎の中で・・・しま子は・・・・・・
不思議ほど、静かに立っていた。
滅火の炎で焼かれる者は、誰しも皆、耐えがたい苦痛にもだえ苦しむ。
あがいて、あがいて、のた打ち回るだけのた打ち回って。
そのあげくに・・・消し炭ひとつ残さず、消えていく。
なのに・・・・・・。
しま子は、その業火の中であたしに微笑んでいた。
呻き声ひとつ上げず
あえぐ事もなく
暴れる事もなく
黙って笑って、あたしを見つめていた。
あたしは・・・・・・
あたしは、時間も、感情も、思考も
・・・すべて。この世のすべての在り様が
この心から消えてしまって・・・・・・
ただ、機械のように、目の前の光景を網膜に映していた。
しま子の目から、命の輝きが確実に失せていくのを、見て。
しま子が、滅されていく様を、この目で、見て。
そして・・・・・・。
そして笑顔の貼り付いた人形のように、もぬけの殻になったしま子が
ついに、ガクンと両膝をつき
そのまま、後ろ向きに・・・
真っ逆さまに崖下へ転落していくのを、バカみたいに口を開けて見ていた・・・・・・。


