「しま子はそんなつもりは・・・」
浄火に向かって叫んだその瞬間・・・・・・。
(・・・・・・うぐっ!?)
しま子がタイミング良く、あたしの襟首をつかむ手に軽く力を込めた。
ノドを押さえられて息が止まり、声が詰まる。
不意を突かれた苦しさに、あたしは顔を歪めた。
その苦痛の表情を見た浄火は、ますます誤解する。
見たこともない憤怒の表情になって、完全に取り乱してしまった。
「赤鬼! きさまあぁぁーーー!!」
炎がわずか一瞬で燃え上がるように、浄火の気の力が瞬く間に高まっていく。
無我夢中の、火事場の馬鹿力。
それが彼の体内の、天内の血を一気に凝縮させていくのが分かった。
逆にあたしの全身の血の気が引いていく。
・・・・・・ヤバイ! ヤバイヤバイヤバイ!
このままじゃ浄火の滅火の力が発動しちゃう!
ぶち切れた時の、天内の馬鹿力の恐ろしさはあたしが一番良く知っている。
本当に最悪の事態を招いてしまう!
(しま子、早くこの手を緩めて!)
ベチベチしま子の手を叩きまくって必死に訴える。
でもしま子は、全く力を緩めようとはしなかった。
黙ってあたしを見つめ続けるだけ。


