「な、なんだ? 何がどうなってるんだ?」


「あの赤鬼、娘を襲っているぞ?」


「・・・仲間じゃなかったのか?」


汗をにじませ苦しむあたしの首元が、不意に少しだけ緩んだ。


ブハッと息を吐き、胸を大きく上下させながらしま子を見下ろす。


そして、気が付いた。


・・・・・・・・・・・・しま子?


しま子の目は、少しも怒ってはいなかった。


いつも通りと全く変わらない顔で、あたしを下から見上げている。


そして、こっそりと何かを訴えていた。


「うあ、ああ、あー・・・・・・」

「しま子?」


ひょっとして、これはワザとやってる事なの? でもどうして?


しま子の真意を測りかねているうちに、島の皆がザワザワと騒ぎ始めた。


「お、おい、本当に仲間じゃないんじゃないのか?」


「あの娘、鬼に殺されちまうぞ?」


「このまま見殺しにしていいのかよ?」


島民たちの動揺がどんどん広がっていく。


それを感じ取ったらしいしま子が、なにかを催促するようにあたしの体を軽く揺さぶった。


「うあ、うああ」


(・・・まさか)


しま子、まさか自分ひとりが悪者になるつもり?


そうやって、あたし達を助けるつもりなの?