絹糸のヒゲがピクリと反応した。


そして物言わぬ目で、浄火をじっと見つめる。


浄火もまた、何も言わずに絹糸の目を見返していた。



絹糸だけじゃない。


お岩さんと塔子さんの様子も、明らかに変化した。


ふたり共、なんとも言えない複雑な表情で浄火を見ている。



・・・・・・なんなんだろう。


常世島? 聞いたことない島だけど。


みんなの様子から察するに、なにか、いわくのある島なんだろうか。



「ねえ、常世島って?」


あたしの疑問には答えず、絹糸は因業ババと話し続けてる。



「なら、ますますもって不可解じゃな。なぜ滅火の力を持っている?」


「祖先の血が目覚めたのだろう」


「そのような事例は、長き歴史の中で聞いたことがない」


「だがいま、目の前でおきているだろう。その事例が」


「・・・・・・・・・・・・」


「論より証拠、ということだ」



急に絹糸は押し黙ってしまった。


逆に因業ババは、舌の動きも滑らかにペラペラと話し続ける。



「分かったな? これで異存はあるまい。さあ急いで婚礼の準備を整えよう」


「いえ異存あります! あるんです、ありまくりです、当の本人が!」



あたしはビシッと手をあげて意見を述べた。