浄火があたしを背負いながら歩き始めた。


いくら歩き慣れてるとはいえ、この悪路を、しかも坂道を、あたしを背負って登る?


・・・ムリだよ!


あたしはベシベシ浄火の肩を叩いて叫んだ。


「なにムチャなことしてんの!?」


「そのセリフ、そのまんまお前に返す」


「下ろして! 自分で歩くから!」


「あれのドコが歩いてんだよ。どう見ても這いつくばってたじゃねえか」


「だって!」


「自慢じゃねえが、足腰は生まれた時から鍛えてる。里緒ひとりぐらい軽いもんだぜ」


「・・・・・・・・・・・・」


「それとも何か? お前、自分が太ってるって認めんのかぁ?」


笑う浄火の大きな手が、あたしの太ももをペンペン叩いた。


そのおどけた仕草に、あたしは返す言葉も無い。


驚くほど広く感じる浄火の背中から、彼の体温が伝わってきた。


少しでもあたしの心を楽にしようとしてくれる、彼の温かい気持ちと一緒に。


「赤鬼を助けたいんだろ? 黙って言うこと聞け。それと・・・」


あたしの足を抱える浄火の手にグッと力がこもる。


同時に彼の足の運びが一気に早まった。


「自分がデブじゃないって思うなら、自信もって堂々と背負われてろよ!」