「それに、もしこの大岩が崩れてきたら『あら痛いわね』じゃ済まないよ?」
「今まで崩れたことねえから大丈夫だろ。たぶん」
「たぶんって、またあんたはテキトーなことを!」
「さてと、コイツとはここでお別れだな」
浄火がハインリッヒを見上げた。
・・・・・・お別れ?
確かにこの巨体じゃ、どう考えてもこの先には進めないけど。
「この先、コイツと一緒のところを島の誰かに見られないとも限らねえしな」
「そ、そっか。そうだね・・・」
「赤鬼やヘビ女とも、そのために別れたんだ。コイツだけ特別扱いはできねえよ」
お岩さんがハインリッヒを見上げて、優しく語りかける。
「あなたとはここで別行動になりますわ。分かりましたわね?」
「お岩さん、それでいいの?」
「ええ。ただわたくしが島から出る時には、ちゃんとこの子も連れて行きますわ」
そだね。もう人間を襲って食べることは、できないんだろうし。
里に連れ帰って面倒をみてあげなきゃ。
権田原のみんな、ビックリするだろなぁ。ちょっと楽しみ。
ハインリッヒはお岩さんの言葉に素直に納得したようで、ゆっくりと背を向ける。
そしてのっそりのっそり、元来た道を帰って行った。
じゃね。ハインリッヒ。また後でね!