浄火とお岩さんがお互いの顔を見合わせる。


そして揃って笑顔で同意してくれた。


「なにも心配ありませんわ。アマンダ」


「人間、調子悪りぃ時ぐらいいくらでもあるだろ?」


「うん! スポーツ選手だって好不調の波があるんだし、それと同じだよね!?」


欲しい言葉を与えてもらって、あたしは安心した。


腫れ物のような不安に蓋をして、心の隅っこに押しやる。


うん。大丈夫、大丈夫。


だって何があるっての? 何もあるわけないよ。


みんなだってこう言ってくれてるんだから。


この事はもう忘れようと、あたしは視線を辺りに走らせる。


・・・・・・ふと、主さんと目が合った。


ハインリッヒの治療を続けながら、無言であたしを見つめている。


何も言わないルビーのような真っ赤な光が、あたしの胸を真っ直ぐ突いた。


『人は同じものを見ていながら、それぞれがまるで違うものを見ようとする』


さっきの主さんの言葉が、突かれた心に鮮明によみがえった。



それは、目の前にある現実を・・・


人は自分の望む形に、心の中ですり替える・・・?


・・・・・・・・・・・・。


だけど、でも・・・・・・。



あたしは、確実なわだかまりを覚えながらも、不自然に主さんから視線をそらすしかなかった。